2011年05月09日

お坊さんの会議、その内容とは

ちょっと時間が経ってしまいました。先日、お寺の教区会議があって、師匠(住職)の代理で出席してきました。総勢17名。皆さん豊橋駅周辺から下地あたりのお寺の住職です。

内容は、決算・予算、毎年行われる各種の研修、それから大きな集会の開催・中止の案件についてなど、さまざまな話が出ました。
特別には、東日本大震災の義援金のことなどでしょうか。あれだけ大きな被害が出ているのですから、一般の方と同様、僧侶や寺族(お寺の奥さんやご家族)も亡くなられています。全壊や半壊した寺院の数も相当です。そういうお寺にどんな援助をしていくのか、それも私たちができる援助(言い換えれば、私たちしかできない、ということでもある)も考えられています。

さて、以下はその会議で出たり、その後の懇親会(食事会)で出た話を聞いた内容にしたがってまとめてみます。

***********

一つは、3月に放送された”クローズアップ現代「岐路に立つお寺」”の話。
(もう一度、自戒も込めて書きますが、)東工大の上田教授(この方は「がんばれ仏教」などの著書で知られ、「癒し」という言葉を広めた方。若手僧侶に対する講演も多数)が、公園にいる人々にアンケートした結果・・・

”「よいイメージを持っている」と答えた人”
 *仏教・・・90%
 *お寺・・・25%
 *僧侶・・・10%
という結果が出た。

結局、そうした檀信徒や一般の方の、僧侶に対するクレームが直接に僧侶に来ない(=話すことはなく、腹の内に貯める)ことで、逆にどんどん距離が広がっていく、それを何とかしなければならない。
みんな仏教は好きなんだ。でも仏教は好きだけど、本来仏教を学び、体現しているはずの僧侶には信頼していない。これを考えるべき。

AERAに取り上げられた慶応大学の教授の試算によれば、このまま宗教離れ、寺離れが進めば、現在76,000もある寺院で、この先、生き残っていけるのは僅かに6,000か寺だそう。

そういう危惧を真剣にいだいている僧侶もいれば、逆に「そのように減っていくのは当然。ちゃんとしたお寺だけが残っていけばそれでいい」という発言をする僧侶もいた、という話も耳にした。或いは、会社のように吸収合併して、或る程度多くの檀家さんを守る一方、僧侶もサラリーマンのように、そのお寺で勤めるという”通常の会社”のような形になった寺院の統合が進むのだろうか。

それから、僧侶は世間の常識(収入や金銭感覚などごく一般的な)を知らなさすぎる。その上、お布施をもらうことばかり考えている。江戸時代から続く寺壇制度にあぐらをかいて、その旨みだけを吸い取ろうとしているから、こんな風に問題になるんだ・・・etc



また別の話題。
現在の日本人は”信心”、信仰心や祈る気持ちを失っている。そうした心を”非科学的な取るに足らないもの”として不要に思っているのが大多数の日本人だ。

例えば、現代では「これこれをこうすれば、このようになる」と言った理屈・理論・法則だけが、真理のように受け取られている。

だが考えてみれば分かるが、この世の中自体が既に理屈ではなりたっていない。理屈がすべて通るのなら、例えば商売で失敗することは絶対にない。(理論に従っていれば)しかし、現実には商売でうまくいく人もいればいかない人もいる。それから自死もそう。自ら命を絶つことなど、地球上の生物で人間だけだ。理屈だけが成立するのなら、生存本能と矛盾する。

しかし、そうであっても”科学”や”理論”だけが絶対だ、と思い込み、宗教・しきたりなどは不要なものだと考える日本人だらけになってしまった。



・・・あとは西光寺に対す苦言も。
「法事が流れ作業のようだ」「法事の時間が短すぎる」
「自宅にお経を読みに来てくれない」(←これは間違ってますが)
確かに反省するべき点はあるが、苦慮しているのも事実。

**********************

・・・と、ここで話が中断してしまったので、その先の話はついぞ聞けずじまいでしたが、中々に考えるべき事柄です。私は、正直、こうした目上の僧侶が話すことがとても勉強になるともっているので、こうした会議はありがたいです。

しかし、逆に聞けば聞くほど、”お寺によって、または僧侶によって、本当に千差万別なんだな”と思わされることもあります。

ちょっと、今回の会議で思ったことがいくつかあるので、それをまた別のログで考えてみたいと思います。

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Posted by 泰明@西光寺 at 12:36
Comments(4)ぼ~さんの日常
この記事へのコメント
弊社のような小規模葬儀の専門店に1週間ぐらいバイトに来て下さればもっと深い部分に触れる事ができますよ。
Posted by 深谷です。 at 2011年05月09日 13:33
寺離れと信仰心の薄れ、この二つは少なからずどの地域、どの寺院でも共有している問題だとは思うんですが、なかなか糸口を見つけるのは難しいですね。

抜本的改革が必要であることはわかっていながら、各人、各寺院、各地域の差異や既得権、思惑、、、色んな問題が複雑に絡んでいるので、誰も手を付けられなくなっているようにも見えます。

既存の伝統宗教は果たして座して死を待つほか無いのか、はたまた、ピンチをチャンスに変えることができるのか。我々に課されたものは重いですが、できることから一つずつ解決するより他はないのかもしれません。
Posted by てん at 2011年05月09日 18:58
うーん……
お寺がもしも、ふつうの会社のような形になってしまったら
なんだかイヤです(^_^;)

確かに、科学や理論ばかりを信じる人は
僕の身の回りにもいますが
それはもしかしたら、仏教やキリスト教を信仰する人がいるように
この人は科学や理論を信じているんだろう、と
てきとうな解釈をするのにとどめています。


年上の人の話から学ぶことは多いですよね!
僕は年上の人の良い行動も悪い行動もよく参考にさせてもらってます(笑
Posted by 志穏 at 2011年05月10日 08:35
>深谷さん

コメントありがとうございます。
そうですね・・・。もっと僧侶は「本当のところ」を知らなければいけないし、逆に僧侶も「(今まで言えなかった)本当のところ」を皆さんにきちんと説明しなくてはいけないと思います。

一週間はちょっと無理かもしれませんが、一日だけでも研修に行かせてほしいです。



>てんさま

お察しの通りです。
「各人、各寺院、各地域の差異や既得権、思惑、、、色んな問題が複雑に絡んでいる」・・・これ、今回の会議で痛感しました。

そうなんだよね。みんな「変えなきゃ!」とは思っている。でも思っていてもまず、どう変えていいかが分からない。それから、立場が違いすぎる(直接的に言えば、僧侶間の貧富の差が激しすぎる)ために、個人の意見がまるで相違している。宗務所やってたから、余計にその違いが見えてきちゃって、先輩僧侶の言い合いが、段々滑稽に見えてきたもの。

どうすればいいんでしょうね?



>志穏さん

素晴らしいご賢察です!
その通りですよ。科学を信じるのは、「宗教」を信じるのとさして違いはないです。

というのも、その”絶対的(だと思い込んでいる)科学”、を信じる”プロセス”を考えれば、簡単に分かります。

例えば、”物質の最小単位は原子である”と私の世代は教えられました。それを無批判、盲目的に”信じた”から、テストでいい点が取れたわけです(笑)
でも、現在は原子はさらに小さなもので構成されている、と言われていますよね。ただ、そういう事です。

気を付けなければいけないのは、だから非科学的でも、だから非宗教的でもいけないと思うのです。別の領域にあるからこそ、お互いに敬意を表して、私たちは学ばなければならない、と思います。

・・・私のブログは志穏さんにとって反面教師・・・かな・・・(汗)
Posted by 泰明@西光寺 at 2011年05月10日 10:03
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