2012年04月03日

続・絵本『地獄』のすごい話

前回、絵本『地獄』が密かに売れている、という記事を書きました。

その絵本にまつわるテレビ番組を見ていて、コメンテーターのあまりのお粗末具合に落胆。あまり悪口めいた事は書きたくないのですが、批判として。

その特集を見たコメンテーターは「トラウマになるかもしれないので、その子どもが受け入れられるかどうかを見極めて読み聞かせなければなりませんね。」と曰った。

何を仰ってるのか?論点はそこじゃないでしょ?仮にトラウマになるとして、それを誰が判断するのですか?親?医者?先生??責任の所在なんて、不明でしょ?
それから、前回の記事にも書いたとおり、この本を読むことで、“悪を止める”という現実に生きている我々の態度に影響する、ということが中心であり、それをあたかもホラー映画の如くに論じている点は、考えが浅はかすぎて、むしろ哀れなくらい。しかもその視聴者は真に受け取るんでしょう「テレビに出ている人が言ってたから」として。
愚かにも程がある。

また、別のコメンテーターは「アメリカでは宗教上の理由で発刊できない。八百万の神ということもアメリカ人は理解できない」だそうで。
だから何なのでしょうか?アメリカ人の考える“宗教”と日本の“宗教”とは全く同じではありません。
これはキリスト教と仏教、或いは神道という意味ではありません。そもそも“宗教”という概念自体がキリスト教を範とし、規定されている言葉だからです。
であればこそ、別にアメリカ人に理解される宗教を我々は打ち出す必要は全くない。余計なお世話だ、というか、この方は何が言いたいんでしょうか?何かにつけ、何事かを一言付け加える事が、現代のインテリジェンスだと勘違いされている、と確か佐々木中も批判的に書いていましたね。何かしゃべっておかないと存在がアピールできないからでしょうか?

一番の欠落は、どなたも“現実世界に生きる我々(というか子ども)にとってのこの絵本の価値”を仰らなかったこと。所詮は「絵本」の話しで、「地獄なんてあるわけない」から「子どものレベル」ということなんでしょう。

私が常々思うのは、別に地獄があっても、なくてもどっちだっていいんです。例えば、一神教や創造主の問題も、“合理主義・科学的に考えたら、神はいない”と思うのでしょう。でも、本当に重要なのは、そんなことではないと思うのです。

いると信じれば、そのように“よく生きる”、いないと思えば、そのように“よく生きる”だけの話しです。そして、その”よく”の意味・行為を担保してくれるのが宗教だったり、道徳だったりする訳です。地獄はいわば、よく生きるための補助線、と言えるかもしれません。
それをすぐに科学的・合理的という短絡的な思考停止状態で生きているから、ようやく今になって社会が、人間が壊れちゃう、というのが私の本心です。
テレビって恐ろしい、とつくづく感じました。短絡的思考停止人間を量産する機械だ、あれは。

・・・とはいうものの、別にマスコミの人間を非難しているわけではありません。私の親友はアナウンサーだし、人格的にも非常に立派な友人です。私自身も“自分はくだらない人間だ”と自認しながら、ドラマを見ています・・・「イサン」大好きだし・・・あ、ビバヒルが終わっちゃう(笑)
ただ、怖いのは民主政治と一緒で“主権者=視聴者の欲望に振り回される”という点です。だから、マスコミが悪いという場合、一番の問題は、あのようなレベルの低いゴシップネタを求める我々のビヘイビアーにあるのです。
続・絵本『地獄』のすごい話


それから、最後に蛇足です。
そもそも、地獄とは何なのか?ということについて。
これは、インドの輪廻(というか多分“転生”)に関わることで、輪廻というのは平たく言えば、「生まれ変わり死に変わる」ことであります。

そして、仏教では死んだ後に、6つの世界が想定され、そこへ生まれ変わるとされます。
天人・修羅・人間・餓鬼・地獄・畜生という6つがそれで、六道とか六趣と呼ばれます。前半3つが、善道、よい世界、後半が悪道、即ち悪い世界であります。
(私もよく分からないのですが、この世界観って、仏教が創始したんですかね?そもそも輪廻という思想は汎インド的で、土着のものと聞いておりますが、六道については、疑問です。ご存じの方は教えてください。)



タグ :絵本地獄

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Posted by 泰明@西光寺 at 07:10
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