2012年09月24日

『未来の住職塾』VS「現職研修会」1

前編:アウトライン

いきなり刺激的なタイトルだが、別に優劣をつける意図が有るわけではないのでご了承を・・・。
とりあえずは、両講座の概略から。

「未来の住職塾」は、既に高名なインターネットヴァーチャル超宗派寺院 彼岸寺の松本師が主催する”お寺の未来を考えるセミナー”である。現在全国5会場、各会場15名程度の、宗派も年齢もバラバラの僧侶が参加している。
 このセミナーが耳目を集めるのは、東大卒にしてMBAホルダーの現役僧侶、松本師が、ドラッカーなどのいわゆる”マネジメント”理論を駆使し、それを中心に据えた異色のセミナーだからである。
 しかし、表面的なプロフィールやマスコミでの採り上げられ方、或いは”外から見ているイメージ”に反して、内実、何もエキセントリックなことをしている訳ではない。
 畢竟、こうした理論を自分のお寺にどう当てはめて、いかにしてより良い関係を檀家さまと築きあげ、良いお寺にしていくか、更には僧侶としてどういう歩みを進めるべきか、を具に考えることがメインテーマである。(むしろ私なぞは、講義が終わると”僧侶としての道心”が常に問いつめられている様な気がして、いつも反省しきり)

「現職研修会」とは、曹洞宗の55歳以下の僧侶が対象で、1年に必ず一度受講義務のある原則2日間の講座のことである。
基本的には宗務所単位(説明が面倒なので、ほぼ都道府県別、と思ってください)で企画・開催され、愛知県は4コマの授業で構成される。
曹洞宗の僧侶においては、もっとも基本的で、かつ重要な講義といって差し支えない。
ちなみに愛知県下は、数百人の対象僧侶が集まり、二日間の講義を受ける。

さて、図らずもその両講座を立て続けに受講して気づいたことがある。

始めに断っておくが、以下は現職研修会に対する曹洞宗宗務庁への批判ではない。そのように取られる懸念があるから先に書いておく。
また、現職研修会は4つのジャンル(4科目、と言った方が分かり易い)に分けられており、今から申し述べることは、今年の「統一テーマ」すなわち、曹洞宗が全国一律で決めるジャンルについてでしかない。つまりは、現職研修会の内容全てではなく一部を採り上げるのみである。
『未来の住職塾』VS「現職研修会」1
さて、長々と前置きを記したが、本題に移る。

今年の曹洞宗の現職研修会、統一テーマとして決められたのは「人びとのこころに向き合うために」というものである。
このテーマの主眼には、現代のストレス社会が生み出す、家族や会社或いは学校の人間関係の不和、またストレスによる身体的、精神的疾患や肥大化する苦悩に対し、我々僧侶が”受け皿”として、どう向き合っていったら良いのか、ということにある。
精神的な”受け皿”として期待されているとはいえ、しかしながら、実際は、悩める方にどのように対応すればよいのか、僧侶自身も少なからず迷いがあり、不安がある。
それに対し、”いかにして人びとの苦悩に向き合い寄り添うことが出来るか”の基本的なスキルと意識の向上を目的としたのが、今回のテーマである。

さて、実はこのテーマ2年連続で開かれ、昨年度の実習は「手紙で相談を受けた場合」であったようだ。(残念ながら、昨年は受講できなかった)
そして、本年は「面接相談のロールプレイ」が行われた。

ロールプレイとは、要するに”相談者がお寺に来て、その相談を住職が聞く”という設定で、僧侶がそれぞれ”相談者役””受け手役(=住職)””観察者(会話に入らずにやりとりを見守る)”の3役に分かれて演じる(=ロールプレイ)、というもの。

最初に、概論的な講義があった。例えば、相談者に対して”自死念慮を持っていると推察される方には敢えてその気持ちを問い、言葉にさせることで、思いとどまらせる可能性が増える”、とか”安易に仏教の教義を持ち出さない”とか、”分析的、解釈的な理解で結論を出さない”などと言ったこと。
1チームはおよそ8名で、実際のロールプレイを2回行った。
相談事は、あらかじめ紙が配られ、そこには相談者の年齢や置かれた状況・悩みなどのシナリオが書かれている。
相談者の役はこれを読み、その身になったつもりで”受け手(住職)”に相談をする。
一回のロールプレイが終わったら、”相談者””受け手””観察者”の順で感想を述べ合う。そして改善点などをディスカッションするという流れ。

文字にすると、非常に具体的で実践的なセミナーに思える。だが、ここには大きな落とし穴があったように感じられた。

まず始めに、グループ分けと役割(ロール)決め。
他の会場ならいざ知らず、愛知県の会場は人数も多い。当然、周りは全く知らない僧侶ばかり、ということも多々ある。にも関わらず、あまりにもグループ分けと役割決めが拙速、お互い目配せするだけで進まない。

こうしたとき、例えば「9月生まれの方は相談者をやってください。いなければ10月生まれ」とか「年齢の一番下の方が受け手をやってください」など講師からの指示があれば割に早い。おかげで、今回のロールプレイは当初、きわめてギクシャクした関係からスタートした。

ま、このグループ分けや役割決めは実はたいした問題ではない。こんなことは、他の組織だって起こりうることだし、人生の様々な点で起こりうる。

が、私は次の”相談者の設定=シナリオ”を見て驚愕した。

*後半へつづく


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Posted by 泰明@西光寺 at 19:51
Comments(2)ぼ~さんの日常
この記事へのコメント
どうも!ご無沙汰しております。

講師はもしかして、新潟の中野さんかね?
Posted by 吉原 at 2012年10月02日 11:21
>吉原さん

こんにちは!こちらこそ、ご無沙汰です。

違うよ。僕らとほぼ同じ歳の方だったよ。だから、まぁ、仕方のない面はあるのかもね。それよりも、中身が、ね・・・。回向文講義とかの方が、よっぽど良かったです。
Posted by 泰明@西光寺 at 2012年10月02日 16:13
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