2012年04月15日

坊主で飯が食えるのか

坊主で飯が食えるのか
前回、戒名の問題についてちょこっと触れてみました。だいぶ長い文章になってしまってすみません。

そのとき採り上げさせて貰った、tenjin先輩のブログで、言い忘れたことがありました。
それは後段の部分です。

師は、

世の戒名無用論に対抗するという時、実は、我々自身の方策は限りがある。


と前置きされた後に、

そして、後は、正直なところ、ここまで世間に於ける供養の無関心が増大していくのならば、我々禅僧もただ個人的な修行のみを行うことを目指し、一切の檀務を放棄して、本当に山の中に入り、完全なる自給自足を行うのも本気で検討した方が良い。かつて、中国で破仏が行われたとき、我々の先達はそのようにして逃げたものだ。その意味での逃避は、遁世と同義であり、自らの聖胎を長養する最善手でもあった。


と述べられています。
正直、私もここのところ、“より良きお寺”を目指して、微力ながら手を尽くしています。(尤もまだ全然ですが・・・)

しかし、しかしです。それでも尚、いわゆる“寺離れ”が進み、お寺自体が維持・運営できなくなったとき、もっとぶっちゃければ”坊主で飯が食えないとき”に、自分はどうするか、と言う切実で、現実あり得る問題が、かなり前からずっと頭の上にのし掛かっていました。

これは非常に苦しい問題です。おおざっぱに分けて、ラストリゾートとして2つの方策があるかと思います。

1.還俗(僧侶をやめる)し一般人として生きる。
2.お寺を離れ、檀務(檀家さんや一般の方への法事や葬儀一般)をやめて、修行に専心する。


で、今の段階で私はどう思っているか。それは2.なのです。なぜなら、僧侶は食うための手立てとしての職業ではなく、生き方そのものだと、はっきり思えるからです。
そして、そのときが来てしまった場合、そのこと(2のチョイス)を既に妻にも話してあります。それでも僧侶として生きていく、ということを。ついでに、私が今急逝した時、どうすれば良いか、ということも。

「何てことを!」と嫌悪感を抱かれた方もいるかもしれません。でもはっきり言っておきますが、普通の方より、僧侶は遙かに“無常迅速”という言葉の重みを、体感していると思うんです。だからこそ、なのです。

そして、きれい事ではなく、本当に、心の底からそう思えてき始めています。(内緒ですが、これまではそんな風にこれぽっちも思えなかった・・・ま、覚悟がなかった、意気地なしと言うことでしょうな・・・笑)

閑話休題。
さて、先日、安岡力也氏が逝去されました。謹んで哀悼の意を表します。このニュースで興味深かったのは、戒名が書かれていたことです。

戒名不要論が頻出する昨今、著名人で戒名が掲載されているというのは極めて珍しいと感じました。しかし、これはとても良いことですね。仏としての名前であり、彼の生涯をたたえ、後世に残るものですから、報道したって罰が当たるものじゃないし、むしろ良いことのように思えます。(いたずらに出せば良いものでもないと思うけど)

死しても尚、生きる者に感銘や、共感や、尊敬の念や、影響(時には嫌悪を)与える事がある、それが人の死の本質です。生物学的な死が死の全てだと思い込んでいる浅薄な連中が多いこの世の中ですが、かずかずの死を見てきて私は痛切にそう感じます。

死をなおざりにする、というのは裏返せば“生”をおろそかにすることです。そして、意義ある死たりえるのは、それは“生”が光り輝いていたからに違いありません。



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Posted by 泰明@西光寺 at 09:27
Comments(3)お寺のこと
この記事へのコメント
おはようございます。吉原です

私は今のところ、どっちつかずですね。子どものことも考慮に入れると。
3人の子どもを一人前の成人に育てたい、という願望(一種の欲なんでしょうが)も強く、心中葛藤している、というのが正直なところです。

「苦悩もまた多し…」

現実逃避にボディビルに走ってます。合掌
Posted by 雲榮山 at 2012年04月17日 07:08
おはようございます。吉原です

私は今のところ、どっちつかずですね。子どものことも考慮に入れると。
3人の子どもを一人前の成人に育てたい、という願望(一種の欲なんでしょうが)も強く、心中葛藤している、というのが正直なところです。

「苦悩もまた多し…」

現実逃避にボディビルに走ってます。合掌
Posted by 雲榮山 at 2012年04月17日 07:08
>雲榮山さま

おはようございます。ご無沙汰です。

「今のところ、どっちつかずですね」いや、まったくその通りですよ。それが偽らざる本心でしょう。それは私とて同じです。

ただ、最後の最後になったとき、どう腹をくくるか、というのは今のうちから決めておいてもいいんだろうと思ったのです。これはtenjin先輩も仰っていました。

不遇な時代とはいえ、だからこそ本物だけが残るでありましょう。共に精進して参りましょう!
Posted by 泰明@西光寺 at 2012年04月18日 08:29
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