2011年02月22日

仏教Q&A:戒名について

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遅くなってしまいました。皆様方よりいただきましたご質問を、ちょっとづつですがお答えしていきたいと思っています。お答えできるまで、お時間をいただいてしまいますが、何分にも学びが浅いもので・・・どうかご寛容のほど、よろしくお願いいたします。
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<質問>
戒名について、自分で好きな漢字やカタカナ、ローマ字で生前に戒名をつくっておいて受戒をしていただいてら戒名になりますか? 
例)モテモテ院サケサケ最強大居士

<回答>
面白いご質問ですね~!

まず、最初に結論を申し上げます。
自分で作った戒名は「戒名」には(定義として)なりません。自分で作ったら、まぁ「あだ名」といったところでしょうか。

それから、カタカナとかローマ字は・・・どうなんでしょうか?これは超難問です。
資格のある僧侶が、きちんとした法式をもって授戒したら、それは戒名なので、(そんなことはまずないですが)カタカナで戒名をつけたら、それは戒名として成り立つのではないでしょうか。(見たことないけど・・・)

ただし、自分の好きな漢字や自分の名前の一文字を入れてほしい、と住職にリクエストのは大いに結構だとおもいます。(西光寺でも、「この一文字を入れてほしい」と言われることがよくあります)


以下は解説です。

そもそも戒名とは何か?ということから始めましょう。(今回はいつになく長くなる気がする・・・)
戒名というと、皆さん”お葬式でもらえる故人の名前”ということはご存じだと思います。
それプラス、”いくつかランクがある”とか”一文字いくらで、長いのは高い”みたいなことをイメージされるんじゃないかと思います。

じゃあなんで「名前」とか「別名」とか「異名」とか言わずに「戒名」なのかと言いますと、それは曹洞宗では葬儀で『授戒(じゅかい)』をするからです。(ちなみに宗派によっては「戒名」とは言わず「法名」と言ったりします)

では、『授戒』とは何か?という流れになりますよね。
授戒というのは、「戒を授けること」であり、導師(住職)から戒法を故人様にお授けすることです。これを、葬儀の冒頭にやっています。(地域によっては、手順が異なりますので、あくまで西光寺の一例としてお考えください)

また、『戒』とは何か?ということなのですが、これは非常に難しく、一面的に答えることは私にはできません。ただ、この場合、戒とは「仏に帰依すること。そして心身の悪を防ぎ、善い行いをするための掟」くらいにご理解ください。私は葬儀の中では”故人様が仏との縁を結び、仏の世界に入る準備をします”というような説明をしています。

ということで、授戒とは、仏との縁を結ぶことです。なぜ授戒をするかというと、それは葬儀の時に、故人様を安らかな世界に導くためにいたします。ごく簡単に言うなら「仏の弟子入り」をするのです。だから「成仏」(=仏に成る)と言ったり、故人のことを「ほとけさん」と言ったりします。(ただ、この表現は必ずしも曹洞宗や仏教の教義と契合しているわけではなく、多分に民俗信仰の要素を取り入れて使われる言葉です)

そして導師から戒を授けられて(=すなわち仏との縁を結び、故人を仏の弟子にして差し上げて)、最後には安らかな世界にお送りするというのが、曹洞宗の一般的な葬儀の流れです。

(*ここら辺の事を、もっと詳しく「これからの『葬儀』の話をしよう」で採り上げたいと思っていますので、またアップしましたらご覧ください。たぶん説明し始めると、”ど長くなる”ので、今日は質問の意図と離れるため、やめます。それから今回のこの説明は、教義的な面からの説明ではなく、あくまで一般的な見方=民俗的な観点に寄っています)

その時、導師から戒を授けられた証が、”戒名”であり、今一つは”お血脈(おけちみゃく)”なのです。戒名は言うなれば、故人様が成仏し、安らかな世界で生きる新しい名前で、お血脈とは、ブッダから累々と続く「教えの家系図」が記されています。家系図の最後に住職の名前、そして故人様のお名前が記されている、というわけです。(血脈は紙でできており、通常10cm四方・厚さ5mm位の大きさに折りたたんであります)

ちなみに、曹洞宗で言うなら、「●●××居士」というのが(男性なら)一般的ですが、正確にはこの中で戒名というのは「××」の部分でしかありません。
細かく見ていくと、道号(●●)+戒名(××)+位階(居士)を組み合わせたもので、位階の部分は男性か女性か、或いは幼児か乳幼児か、といったように分かれています。このブログを始めた最初の方に、お寺に対する本音(前半)をいう記事を書きましたが、ここでも少し触れているので、よろしければご覧ください。

もう少しだけお付き合いください。
この道号(●●)と戒名(××)にはそれぞれ相応しい語句があります。簡単に言えば禅語だとか風景、スケール感のある言葉・仏教語などがそれにあたるとされています。
ついでに、これはある住職さんからお聞きしたことですが、「戒名には、平仄も関係があって、平、もしくは仄がすべて同じにならないようにして付けなさい」と言われたことがあります。

「平仄(ひょうそく)」って何???って感じですよね。
中国語に四声というのがあるのはご存じだと思います。(いわゆるマ→、マ↑、マ↓、マ^、みたいなやつです)この発音を大きく二種類に分けたものが平仄です。「平」は平声、「仄」は上声・去声・入声というグループに分けられます。たぶん、漢詩を作られる方は常識だと思います。結局、音のリズムを単調にさせないために、平仄があるんじゃないでしょうか。こんなことも戒名をつける上では重要なんですね。


今回は、いつもにも増して長くなってしまいました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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Posted by 泰明@西光寺 at 14:22
Comments(4)仏教 Q&A
この記事へのコメント
勉強になります。
Posted by 家族葬専門葬儀社あおい葬祭 深谷憲弘 at 2011年02月22日 16:43
うちのお袋の戒名には親父の一字とお袋の一字が入っています。
ここで書きませんがいただいた時、うれしかったです。
いろんな事があってお袋は亡くなったんですが・・・
親父はリクエストしてないそうです。
Posted by お仏壇の分解クリーニング 夢助工房 at 2011年02月22日 23:07
とても勉強になりました。

>音のリズムを単調にさせないために、平仄があるんじゃないでしょうか
 それはあるでしょうね。それと、これは推測ですが、耳で聞いて印象に残るようにという配慮もあるような気がします。今みたいに識字率がとても高いとピンと来ないでしょうが、少し難しい字のオンパレードだったりすると、読めない人がいたと思います。そういう人への配慮もあったのではないでしょうか。
Posted by ヒソカ at 2011年02月23日 01:34
みなさま、コメントありがとうございます。


>深谷さん
お役に立てれば幸甚です。明日、楽しみにしております!



>夢助工房さん
そうでしたか。
お名前の一字をいただいてお戒名をつけることは多いですね。とても大事なことだと思います。


>ヒソカさん
耳で聞いて印象に残る、というのは確かにあるでしょうね。もとは漢詩も吟じるためにあるものですから。

この「平仄」というのは、私も恥ずかしながら全く知らなかった概念なのですが、漢詩を作るときの常識みたいです。
基本的に私たちを含めた禅宗は中国の影響を色濃く残すので、漢詩を作るのは、ある意味では必須科目だったりします。

作るときに、”24不同26対”とか”124の韻”とか、”四六駢儷体”とかそういうルールが決まっていて、まぁこれは様式美ってやつですかね。その根底にあるのが中国の発音法式(四声)でしょうね。

でも、こうしたことは案外誰も教えてくれないんですけどね(笑)
Posted by 泰明@西光寺 at 2011年02月23日 09:01
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