2011年05月01日
掃除のスペシャリストたち
先日、田原市赤羽根町のお寺に、法要の準備会に行ってきました。
来月、5月下旬に大きな法要があるので、そのための打ち合わせ&準備です。
↓これ、なんだと思いますか?

そう、”お籠”です。このお寺は由緒正しき古刹で、なんと自前のお籠があります。もちろん、現在使っているわけではありませんが、昔は自家用車のように大きなお寺は自前のお籠があったそうです。
このお籠はいつ頃のものかは分かりませんが、現在は完璧にメンテナンス(再塗装・リペア)されていて新品同様。それに通常は近くの資料館で保存・展示されているので、実際に乗ることもできます。
(余計なことですが、このお籠、ため息が出るほどに無駄のない機能性を兼ね備えていて、天井部分はガルウィング式に跳ね上がり、赤い簾の部分はスライドします。しかも簾の部分はまるでシトロエンの2CVの窓のように半分上げることができ、内部は折りたたみの小さな机もあります。現代の高級車も真っ青な機能美を備えていました。昔の日本人の美的センスと職人芸に脱帽です。)
で、今回の法要でこの”お籠”に新住職が乗ってお寺に入ります。
どういう事かと言いますと、来月の法要、大きくは2つのパートに分かれていて、前半は「晋山式」(しんさんしき)という式をします。
これは新住職の就任式なのですが、ただの式典(辞令交付)とは違います。
昔々、大昔に思いを馳せてみてください。車も電気もない時代。
新しく住職の辞令を受けた僧侶は、今までいたお寺を去り、新たに住職として(世襲ではないので)、別のお寺に入ります。車もない時代ですから、当然歩いていくわけです。その間、お寺の檀家さんたちは、新しい住職を迎えるために、宿の手配をしたり、お寺を修理したり、ごちそうを作ったりと「おもてなし」の準備に余念がありません。
住職としても、もしかしたら初めて”住職”としてお寺に入るかもしれず、気持ちを新たに旅を進めます。
で、ここからが「晋山式」のスタートです。お寺に入る直前、「親元」と呼ばれるお寺の近くの檀家さんの家に新住職は泊めてもらい、そこで一夜を過ごします。翌朝、お礼の気持ちを込めて、その家のご先祖様に供養のお経を上げ、正式な衣に着替えます。そして、まさに”初めて”その赴任先のお寺に入るのです。
これが、本来の晋山式です。
「親元」のお檀家さんのお宅から、このお籠に乗って、お寺の門である、山門に到着します。山門に到着すると、新しい住職を迎えるため、近隣の(本来はそのお寺にいる修行僧も、でしょう)お寺が列をなしてお待ちしています。そこで、新住職はお香を焚き、自らの心中、決意をしたためた短い漢文を読み上げます。こうしていよいよお寺の本堂に向かうのですが・・・全部説明すると、ど長くなりそうなので、今日はこの辺で(笑)
とにもかくにも、住職の一世一代の大舞台であり、檀信徒の方にとっては新しい住職をお迎えするという祝賀会でもあります。私も昨年の5月1日に(あ、ちょうど一年前だ)この「晋山式」をさせてもらいましたが、大勢の僧侶とお寺のお檀家さんのご協力をいただき、無事におつとめができました。本当に感動的な式典でもあります。

閑話休題。
この日の準備会は主に法要に必要な仏具や機材の確認と、掃除。
そこで”なるほど”と思わされることがありました。
それは、掃除。
一軒、長屋のようなお部屋を掃除したのですが、若手僧侶がチームを組むと、自然とチームワークが生まれて、しかも、”掃除のツボ”を全員が共有しているかのようでした。誰も何にも言わなくても”共通のゴール”(=掃除完了)に向かって、どのような”各人のプロセス”(=掃除方法)をすればよいのか、無意識に了解しているように感じました。
つらつら考えてみるに、これはひとえに修行の成果ではなかろうか、と。その時、私含めて8名ほどの僧侶が一緒に掃除していたのですが、後から考えたら、7人が永平寺で1人が総持寺。ともに曹洞宗の大本山です。
何というか・・・別にプロの掃除屋さんと向こうを張ろうとか、誰よりも綺麗にできるとか、そういう意味ではなく、掃除に限らず、年代は違えど、”修行をして体に刻まれた共通認識”、というのが出来上がるのではないか、と思った次第です。
横山行敬さん(新城市議にして曹洞宗の僧侶にして、どすごいブロガー)もご自身のブログで触れられていましたが、やはり「平常時にはそれほど目立たなくても、有事の際の動き方については、すでに体にプログラミングされたものがあ」るのでしょうね。まぁ、今回はお掃除なので、有事とはちょっと違いますが、妙に納得してしまいました。
次回の打ち合わせ+会議は10日。素晴らしい儀礼・式典になるように、私も微力ながら精進していきたいと思います。 合掌
来月、5月下旬に大きな法要があるので、そのための打ち合わせ&準備です。
↓これ、なんだと思いますか?

そう、”お籠”です。このお寺は由緒正しき古刹で、なんと自前のお籠があります。もちろん、現在使っているわけではありませんが、昔は自家用車のように大きなお寺は自前のお籠があったそうです。
このお籠はいつ頃のものかは分かりませんが、現在は完璧にメンテナンス(再塗装・リペア)されていて新品同様。それに通常は近くの資料館で保存・展示されているので、実際に乗ることもできます。
(余計なことですが、このお籠、ため息が出るほどに無駄のない機能性を兼ね備えていて、天井部分はガルウィング式に跳ね上がり、赤い簾の部分はスライドします。しかも簾の部分はまるでシトロエンの2CVの窓のように半分上げることができ、内部は折りたたみの小さな机もあります。現代の高級車も真っ青な機能美を備えていました。昔の日本人の美的センスと職人芸に脱帽です。)
で、今回の法要でこの”お籠”に新住職が乗ってお寺に入ります。
どういう事かと言いますと、来月の法要、大きくは2つのパートに分かれていて、前半は「晋山式」(しんさんしき)という式をします。
これは新住職の就任式なのですが、ただの式典(辞令交付)とは違います。
昔々、大昔に思いを馳せてみてください。車も電気もない時代。
新しく住職の辞令を受けた僧侶は、今までいたお寺を去り、新たに住職として(世襲ではないので)、別のお寺に入ります。車もない時代ですから、当然歩いていくわけです。その間、お寺の檀家さんたちは、新しい住職を迎えるために、宿の手配をしたり、お寺を修理したり、ごちそうを作ったりと「おもてなし」の準備に余念がありません。
住職としても、もしかしたら初めて”住職”としてお寺に入るかもしれず、気持ちを新たに旅を進めます。
で、ここからが「晋山式」のスタートです。お寺に入る直前、「親元」と呼ばれるお寺の近くの檀家さんの家に新住職は泊めてもらい、そこで一夜を過ごします。翌朝、お礼の気持ちを込めて、その家のご先祖様に供養のお経を上げ、正式な衣に着替えます。そして、まさに”初めて”その赴任先のお寺に入るのです。
これが、本来の晋山式です。
「親元」のお檀家さんのお宅から、このお籠に乗って、お寺の門である、山門に到着します。山門に到着すると、新しい住職を迎えるため、近隣の(本来はそのお寺にいる修行僧も、でしょう)お寺が列をなしてお待ちしています。そこで、新住職はお香を焚き、自らの心中、決意をしたためた短い漢文を読み上げます。こうしていよいよお寺の本堂に向かうのですが・・・全部説明すると、ど長くなりそうなので、今日はこの辺で(笑)
とにもかくにも、住職の一世一代の大舞台であり、檀信徒の方にとっては新しい住職をお迎えするという祝賀会でもあります。私も昨年の5月1日に(あ、ちょうど一年前だ)この「晋山式」をさせてもらいましたが、大勢の僧侶とお寺のお檀家さんのご協力をいただき、無事におつとめができました。本当に感動的な式典でもあります。

閑話休題。
この日の準備会は主に法要に必要な仏具や機材の確認と、掃除。
そこで”なるほど”と思わされることがありました。
それは、掃除。
一軒、長屋のようなお部屋を掃除したのですが、若手僧侶がチームを組むと、自然とチームワークが生まれて、しかも、”掃除のツボ”を全員が共有しているかのようでした。誰も何にも言わなくても”共通のゴール”(=掃除完了)に向かって、どのような”各人のプロセス”(=掃除方法)をすればよいのか、無意識に了解しているように感じました。
つらつら考えてみるに、これはひとえに修行の成果ではなかろうか、と。その時、私含めて8名ほどの僧侶が一緒に掃除していたのですが、後から考えたら、7人が永平寺で1人が総持寺。ともに曹洞宗の大本山です。
何というか・・・別にプロの掃除屋さんと向こうを張ろうとか、誰よりも綺麗にできるとか、そういう意味ではなく、掃除に限らず、年代は違えど、”修行をして体に刻まれた共通認識”、というのが出来上がるのではないか、と思った次第です。
横山行敬さん(新城市議にして曹洞宗の僧侶にして、どすごいブロガー)もご自身のブログで触れられていましたが、やはり「平常時にはそれほど目立たなくても、有事の際の動き方については、すでに体にプログラミングされたものがあ」るのでしょうね。まぁ、今回はお掃除なので、有事とはちょっと違いますが、妙に納得してしまいました。
次回の打ち合わせ+会議は10日。素晴らしい儀礼・式典になるように、私も微力ながら精進していきたいと思います。 合掌
この記事へのコメント
初めてコメントさせていただきます!
実は今年の3月頃からちょくちょくブログを読ませていただいてました。
“お籠”には、そんなに素晴らしい機能が備わってたんですね。
僕は“お籠”なんて、
歴史の教科書や古文の教科書でしか見たことないですから
ブログを読んで、「へぇー」って、
思わずひとり、口に出してしまいました(笑
そして
晋山式、なんだか素敵ですね!
式の成功をお祈りします。
“修行の成果”、ですか。
すごいものですね。
僕は今、大学生。
4年間のうちに、なにかひとつでも
ここぞというときに発揮できるなにかが
身につくといいです……。
実は今年の3月頃からちょくちょくブログを読ませていただいてました。
“お籠”には、そんなに素晴らしい機能が備わってたんですね。
僕は“お籠”なんて、
歴史の教科書や古文の教科書でしか見たことないですから
ブログを読んで、「へぇー」って、
思わずひとり、口に出してしまいました(笑
そして
晋山式、なんだか素敵ですね!
式の成功をお祈りします。
“修行の成果”、ですか。
すごいものですね。
僕は今、大学生。
4年間のうちに、なにかひとつでも
ここぞというときに発揮できるなにかが
身につくといいです……。
Posted by 志穏 at 2011年05月01日 23:07
>志穏さん
こんにちは。はじめまして。コメントありがとうございます!こんなヘンテコなブログでもお読みくださり、うれしい限りです。
私も籠の内部まで見たのは初めてです。百聞は一見に如かず、というのは本当で、いろいろと勉強になりました。
晋山式は、お寺の行事でも珍しく”お祝い”なので、一見するとおめでたそうに見えないのですが、100%”祝典”です(笑)いつかどこかのお寺でご覧になると、結構感動しますよ!
志穏さんは大学生でいらっしゃるのですね。恥ずかしいな話ですが、私は多分に漏れず学生時代は”怠惰な生活”を送っており(汗)、とても人にお話しできるようなことはしておりませんが、志穏さんのように志が高ければ、きっと叶うと思いますよ。
仰る通り、大学生でしかできないこともありますので、どうか悔いの残らない学生生活をお送りください。
こんなブログですが、またご覧いただければうれしいです。これからもどうぞよろしくお願いします。
こんにちは。はじめまして。コメントありがとうございます!こんなヘンテコなブログでもお読みくださり、うれしい限りです。
私も籠の内部まで見たのは初めてです。百聞は一見に如かず、というのは本当で、いろいろと勉強になりました。
晋山式は、お寺の行事でも珍しく”お祝い”なので、一見するとおめでたそうに見えないのですが、100%”祝典”です(笑)いつかどこかのお寺でご覧になると、結構感動しますよ!
志穏さんは大学生でいらっしゃるのですね。恥ずかしいな話ですが、私は多分に漏れず学生時代は”怠惰な生活”を送っており(汗)、とても人にお話しできるようなことはしておりませんが、志穏さんのように志が高ければ、きっと叶うと思いますよ。
仰る通り、大学生でしかできないこともありますので、どうか悔いの残らない学生生活をお送りください。
こんなブログですが、またご覧いただければうれしいです。これからもどうぞよろしくお願いします。
Posted by 泰明@西光寺 at 2011年05月02日 10:36
質問です。
何でお坊さんっていつもジンベイ姿なんですか?
宗教的に意味があるのですか?(そんなわけないと思いますが)
何でお坊さんっていつもジンベイ姿なんですか?
宗教的に意味があるのですか?(そんなわけないと思いますが)
Posted by 家族葬専門葬儀社あおい葬祭 深谷憲弘 at 2011年05月04日 12:00
>深谷さん
こんにちは。ご無沙汰してます!コメントありがとうございます。
これはジンベイではなく、作務衣(さむえ)と言います。
まぁ、作業着、という意味合いですね。
宗教的には・・・わかりません・・・でも、あんまり意味はなさそうです(笑)
こんにちは。ご無沙汰してます!コメントありがとうございます。
これはジンベイではなく、作務衣(さむえ)と言います。
まぁ、作業着、という意味合いですね。
宗教的には・・・わかりません・・・でも、あんまり意味はなさそうです(笑)
Posted by 泰明@西光寺
at 2011年05月04日 12:27
